ウダーナ ~ ベスト・オブ・仏教

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ウダーナ ~ ベスト・オブ・仏教 第8章5チュンダの経(解説・2)


8.5 チュンダの経(75)
 このように、わたしは聞きました。
あるとき、お釈迦様は、マッラ国で、大いなる修行者の僧団と共に、遊行の旅を歩みながら、パーヴァー市のあるところに着きパーヴァーに住んでいる、鍛冶屋の子のチュンダのマンゴーの果樹園で。鍛冶屋の子のチュンダは、
 「お釈迦様がマッラ国で、大いなるビク衆と共に、遊行の旅をしながらパーヴァー市に到
  着し、わたしのマンゴーの果樹園にとどまっている」と耳にしました。
  鍛冶屋の子のチュンダは、お釈迦様のおられるところに行き、ご挨拶(あいさつ)し
  て、かたわらに坐った。鍛冶屋の子のチュンダに、お釈迦様は法(真理)の法話によっ
  て、教えられ、観(すす)められ、励まし、喜ばせました。鍛冶屋の子のチュンダは、
  お釈迦様から法(真理)の講話により真理を教えられ、観(すす)められ、励まされ、
  喜び。お釈迦様に、こう申し上げた。
 「尊き方よ、世尊よ、明日わたしの食事をビク衆と共にお受けください」
お釈迦様は、沈黙をもってお受けになりました。
 鍛冶屋の子のチュンダは、お釈迦様がお受けすることを知って坐から立ち上がって、お釈迦様にご挨拶(あいさつ)して立ち去りました。
 鍛冶屋の子のチュンダは、夜が明けると家で、美味しい固い食べ物や軟らかい食べ物を準備して、沢山のスーカラマッダヴァを準備して、お釈迦様に、「尊き方よ、お食事の用意ができました」と告げた。
 お釈迦様は、朝早くに衣を着て鉢と衣料をもってビク衆と共に、語りかけました。
 「チュンダさん、あなたが用意したスーカラマッダヴァは、わたしに給仕してください。
  美味しい固い食べ物や軟らかい食べ物はビクたちに給仕してください」
 「尊き方よ、わかりました」と、鍛冶屋の子のチュンダは、お釈迦様に答えて準備してあ
  ったスーカラマッダヴァをお釈迦様に給仕し、固い食べ物や軟らかい食べ物はビク衆に
  給仕したのです。
お釈迦様は、鍛冶屋の子のチュンダに、語りかけました。
 「チュンダさん、残されたスーカラマッダヴァは、穴に埋めてください。チュンダさん、
  天界や、魔界や、梵界などの世で、サマナやバラモンなどの人々で、天の神や人間など
  の人々で、それを食べられるのは、私しかいないのです」
 「尊き方よ、わかりました」と鍛冶屋の子のチュンダは、残されていたスーカラマッダヴ
ァを穴に埋めてお釈迦様にご挨拶(あいさつ)して、かたわらに坐りました。
かたわらに坐った鍛冶屋の子のチュンダにお釈迦様は、法(真理)の法話によって、教えられ、観(すす)められ、励まし、喜ばせ、坐から立ち上がって、立ち去りました。
 お釈迦様が、鍛冶屋の子のチュンダの食事を食べたところ、激しい病苦が起こり、血の下痢で、死ぬほどの苦痛が起こります。お釈迦様はきづきと、正しく知る力で、打ちのめされることなく耐え忍びました。
 お釈迦様は、尊者アーナンダに語りかけました。
 「アーナンダよ、行こう。クシナーラー村のあるところに行こう」
 「尊き方よ、わかりました」と、尊者アーナンダはお釈迦様にお答えしました。
鍛冶屋の子のチュンダの食物を食べて
覚者は、激しい死ぬ程の
病苦にかかられたと
私は聞いている
食事をした教師には、スーカラマッダヴァによる
激しい病が起こった
下痢をしつつ世尊は言った
わたしは、クシナーラーの城市に行く
お釈迦様は、道を外れて木の根元に近づき、尊者アーナンダに。
 「アーナンダよ、四重に大衣をたたんで敷いておくれ、アーナンダよ、疲れました、坐り
  たい」
 「尊き方よ、わかりました」と、尊者アーナンダは、お釈迦様に答えて四重に大衣を畳ん
  で敷いた。
お釈迦様は、そこに坐られ尊者アーナンダに語りかけました。
 「アーナンダよ、水を持ってきておくれ。アーナンダよ、喉が渇きました。水が飲みた
  い」
このように言われたとき尊者アーナンダはお釈迦様にこう申し上げました。
 「尊き方よ、いま五百ほどの荷車が通り過ぎたところです。水は荷車の車に汚され、少な
  くなり、かき乱され、にごったまま流れています。尊き方よ、あのククダー川がここか
  ら遠く離れていないところにあります。水は澄み、水は冷たく、水は白く、美しい岸辺
  があり快適なところです。世尊よ、水を飲むこともできますし体を冷やすこともできま
  す」
再度また、お釈迦様は、そこに坐られ尊者アーナンダに語りかけました。
 「アーナンダよ、水を持ってきておくれ。アーナンダよ、喉が渇きました。水が飲みた
  い」
このように言われたとき尊者アーナンダはお釈迦様にこう申し上げました。
 「尊き方よ、いま五百ほどの荷車が通り過ぎたところです。水は荷車の車に汚され、少な
  くなり、かき乱され、にごったまま流れています。尊き方よ、あのククダー川がここか
  ら遠く離れていないところにあります。水は澄み、水は冷たく、水は白く、美しい岸辺
  があり快適なところです。世尊よ、水を飲むこともできますし体を冷やすこともできま
  す」
三度また、お釈迦様は、尊者アーナンダに、語りかけました。
 「アーナンダよ、水を持ってきておくれ。アーナンダよ、喉が渇きました、水が飲みた
  い」
このように言われたとき尊者アーナンダはお釈迦様にこう申し上げました。
 「尊き方よ、わかりました」と、尊者アーナンダはお釈迦様に答えて鉢を抱えてその川に
  行きました。川の水は車に汚され、少なくなり、かき乱され、にごったまま流れていま
  すが、尊者アーナンダが近づくと、水は澄み、清らかとなり、にごりなく流れます。
尊者アーナンダは、こう思いました。
 「ああ、めったにないことだ。ああ、はじめてのことだ。お釈迦様の偉大なる神通だ、偉
  強い力だ、川の水は車に汚され、少なくなり、かき乱され、にごったまま流れている
  が、わたしが近づくと、水は澄み、清らかとなり、にごりなく流れるからだ」
尊者アーナンダは鉢で水を汲んでお釈迦様のところに行き、お釈迦様にこう申し上げた。
 「尊き方よ、めったにないことです。尊き方よ、はじめてのことです。お釈迦様の偉大な
  る神通です。強い力です。川の水は車に汚され、少なくなり、かき乱され、にごったま
  ま流れていますが、わたしが近づくと、水は澄み、清らかとなり、にごりなく流れるか
  らです。世尊よ、水をお飲みください。善き到達された方よ、水をお飲みください」
 お釈迦様は、水を飲まれました。お釈迦様は、ビク衆と共に、ククダー川のあるところに行き、ククダー川に深く入って行って沐浴して、水を飲んで、川から上がって、マンゴー樹林に近づいて尊者チュンダカに語りかけました。
 「チュンダカよ、四重に大衣を畳み敷いておくれ。チュンダカよ、わたしは疲れました横
 になりたい」
 「尊き方よ、わかりました」と、尊者チュンダカは、お釈迦様に答えて、四重に大衣を畳
  み敷いた。お釈迦様は足に足を重ねて、右脇を下にして獅子のように横になり、きづき
  と正しく知ることを、保ち次に起き上がることを心に描いて、
 尊者チュンダカは、お釈迦様の前に坐っていた。


水は澄み、水は冷たく、清らかなククダー川に、
覚者は行き、教師は、
世において並びなき師、悟った方は
ひどく疲れた様子で、川に入った


沐浴して水を飲んで、教師は川から上がった
ビクの衆の中において尊ばれる教師は
この世において法(真理)を転起させる方世尊は
偉大なる聖者は、マンゴー林へと近づかれた
チュンダカという名のビクに語りかけた。
『わたしのために四重に大衣を敷いておくれ、横になりたい』


 自己を修めた方(ブッダ)にせかされたチュンダカは
急いで四重に畳んだ大衣を敷いた
教師はひどく疲れた様子で横になった
チュンダカも面前に坐した
お釈迦様は、尊者アーナンダに、語りかけました。
 「アーナンダよ、鍛冶屋の子のチュンダに、後悔させないように。『友よ、チュンダよ、
  わたくしが、あなたの最後の食事で完全なる涅槃に到達した。福徳は、なかなかないも
  のとなります』と。アーナンダよ、鍛冶屋の子のチュンダが後悔しないように。
 『友よ、チュンダよ、あなたの最後の食事で、完全なる涅槃に到達されたことは、果報や
  幸福は、なかなかないのです。チュンダよ、わたしは、この言葉を世尊の面前で聞き世
  尊の面前で受けました。
 「二つの食事は果報となり、どのような食事よりもより大きな果報となり、より大いなる
  幸福となります。覚者が食事をして、この上ない悟りを悟られるなら、その食事で、身
  体という残りものがない涅槃から、完全なる涅槃に達するなら、この食事は果報とな
  り、どの食事より、おおきな果報となり、なにより大きな幸福となります」
鍛冶屋の子の尊者チュンダは、寿命の生じふえる業を積んだのです。
鍛冶屋の子の尊者チュンダは、容色の生じふえる業を積んだのです。
鍛冶屋の子の尊者チュンダは、安楽の生じふえる業を積んだのです。
鍛冶屋の子の尊者チュンダは、天生の生じふえる業を積んだのです。
鍛冶屋の子の尊者チュンダは、名声の生じふえる業を積んだのです。
鍛冶屋の子の尊者チュンダは、優越の生じふえる業を積んだのです』
 アーナンダよ、鍛冶屋の子のチュンダに後悔させてはなりません。
  お釈迦様は、このことを知って、ウダーナを唱えました。


常に布施している者に功徳は増大し
常に自制している者に恨みは積もらない
賢い人は悪業を捨てる
貪りと怒りと迷いは滅し涅槃に達する
(85)
      以上が第五の経となる。



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布施の徳
*チュンダの布施はこの二つの布施から得られる功徳と同じなのです。
*世にこの上のない偉大なる布施が二つあります。
*➀.悟りを開く前に頂いた布施、➁.涅槃に入られる日で頂いた布施です。
*これは長い経典なので、ポイントだけに集約して、他は省略しています。
*チュンダの布施の徳は、
1.Āyusaṃvattanikaṃ 寿命の長久〔ちょうきゅう〕を生ぜしめる業、
2.vaṇṇasaṃvattanikaṃ すぐれた容色〔ようしょく〕を生ぜしめる業、
3.sukhasaṃvattanikaṃ 安楽を生ぜしめる業、
4.saggasaṃvattanikaṃ 天界の生〔せい〕を生ぜしめる業、
5.yasasaṃvattanikaṃ 名声を生ぜしめる業、
6.ādhipateyyasaṃvattanikaṃ 卓越〔たくえつ〕した威力〔いりょく〕を生ぜしめる業、



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なにが書いてあるか


(直訳詩)
Dadato puññaṃ pavaḍḍhati,
与える人には、功徳は増大し
Saṃyamato veraṃ na cīyati;
自制している人に、恨みは積まれない
Kusalo ca jahāti pāpakaṃ,
善き人は、悪しきを捨てる
Rāgadosamohakkhayā sanibbuto”ti.
貪りと怒りと迷いは滅尽し、涅槃に達した



解 説


Dadato puññaṃ pavaḍḍhati,
与える人には、功徳は増大し常に布施している者に功徳は増大し
Saṃyamato veraṃ na cīyati;
常に自制している者に恨みは積もらない
Kusalo ca jahāti pāpakaṃ,
賢い人は悪業を捨てる
Rāgadosamohakkhayā sanibbuto”ti.
貪りと怒りと迷いは滅し涅槃に達する
 *貪りと怒りと迷い、貪怒痴のこと
 *アーナンダ尊者に対して「釈尊から直接受けた言葉」として鍛冶屋に伝えるように頼む
  詩です。

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