ウダーナ ~ ベスト・オブ・仏教 第3章3ヤソージャの経(現代語訳・解説)
3.3 ヤソージャの経(23)
このように、わたしは聞きました。
あるとき、お釈迦様は、サーヴァッティーに住んでおられた。
ジェータ林のアナータピンディカ長者の聖園で、ヤソージャと五百ほどの修行者たちが、お釈迦様とお会いするためにサーヴァッティーに到着したのです。
それらの来客の修行者はここに住む修行者と共に今回の出会いを喜び合い、寝具や座具を用意しつつ鉢と衣料をととのえながら、むやみやたらと高い声をあげ大きな音をたてるのでした。 お釈迦様-は、尊者アーナンダに語りかけました。
「アーナンダよ、漁師たちが魚を獲っているかと思うような、高い声をあげ大きな音をたてるこれらの者たちは誰なのですか」
「尊き方よ、これらの者はヤソージャと五百ほどのビクたちで、世尊とお会いするために
サーヴァッティーに到着したのです。
来客の修行者は、修行者と今回の出会いを喜び合い寝具や座具を用意し鉢と衣料をととのえながら、むやみやたらと高い声をあげ大きな音をたてるのです」
「アーナンダよ、わたしの言葉をビクたちに伝えなさい。『教師が、あなたたちを呼んで
います』」
「尊き方よ、わかりました」と、尊者アーナンダは、修行者に伝えた。
「教師が、あなたたちを呼んでいます」
「友よ、わかりました」と、修行者は、尊者アーナンダに答えて、お釈迦様にご挨拶し
て、かたわらに坐った修行者に、
「ビクたちよ、あなたたちは漁師たちが魚を獲っているかと思うような、高い声をあげ大
きな音をたてるのですか」
このように言われたとき、尊者ヤソージャは
「尊き方よ、五百ほどのビクたちは、世尊とお会いするために、サーヴァッティーに到着
したのです、来客のビクたちは、在住のビクと共に今回の出会いを喜び合いつつ、寝具
や座具を用意し鉢と衣料をととのえながら、むやみやたらと高い声をあげ大きな音をた
てるのです」
「ビクたちよ、去りなさい。ここから出ていきなさい。あなたたちは、わたしの近くにい
てはなりません」
「尊き方よ、わかりました」
それらの修行者は、お釈迦様に答えて立ち上がって、ご挨拶(あいさつ)して、寝具や座具をたたんで鉢と衣料を手にもってヴァッジー国へと遊行の旅に出ました。
ヴァッジー国では、遊行の旅をしながらヴァッグムダー川のあるところにやってきて、岸辺に草庵を作って雨期の修行に入りました。
そこで、雨期の修行に入った尊者ヤソージャは、修行者たちに語りかけました。
「友よ、世尊は、わたしたちのことを願って、わたしたちのことを考えて、思いやりもっ
て、わたしたちを追い出したのです。友よ、わたしたちは、世尊が、わが想いが伝わっ
たと思うように、わたしたちは雨期の生活をしよう」
「友よ、わかりました」と、修行者は、尊者ヤソージャに答えました。
修行者は、人里はなれ、きづきを怠らず、熱心に、精励し、雨期の間に、全ての修行者は、三つの明知(三明:宿命通・天眼通・漏尽通)を得た。
お釈迦様は、サーヴァッティーで心ゆくままに滞在し、ヴェーサーリー市に遊行の旅に出ました。
遊行の旅をしながら、ヴェーサーリー市に着きお釈迦様は、ヴェーサーリーハー林の二階建て堂舎(重閣講堂)で、ヴァッグムダー川の岸辺にいる修行者たちの心を察知して、おもいやり、尊者アーナンダに語りかけました。
「アーナンダよ、かなたから光明が見えます。アーナンダよ、かなたから光輝が見えま
す、ヴァッグムダー川の岸辺にいるビクが修行しているところです。そこは、かねてか
ら心地よいところであった。
アーナンダよ、ヴァッグムダー川の岸辺にいるビクに使者を送るのです。『教師が、あ
なたたちを呼んでいます、教師が尊者たちと会いたいとお望みです』」
「尊き方よ、わかりました」と、尊者アーナンダは、お釈迦様に答えて修行者のいるとこ
ろに行き、こう伝えました。
「友よ、ヴァッグムダー川の岸辺にいるビク衆のところに行き、ヴァッグムダー川の岸辺
にいるビクに、このように言いなさい。『教師が、あなたたちを呼んでいます、教師
が、尊者たちと会いたいとお望みです』」
「友よ、わかりました」
その修行者は、尊者アーナンダに答えて、ちからのある人が曲げた腕を伸ばす間に伸ばした腕を曲げる間に、マハー林の二階建て堂舎から姿を消し、ヴァッグムダー川の岸辺にいる修行者たちの前に現れました。
その修行者は、ヴァッグムダー川の岸辺にいる修行者に、「教師が、あなたたちを呼んでいます、教師が尊者たちと会いたいとお望みです」
「友よ、わかりました」
修行者たちは、寝具や座具をたたんで、鉢と衣料を手にもって、ちからのある人が曲げた腕を伸ばす間に伸ばした腕を曲げる間に、ヴァッグムダー川の岸辺から姿を消し、マハー林の二階建て堂舎におられる、お釈迦様の面前に姿を現した。
お釈迦様は、不動の心の統一によって坐っておられた。
修行者たちは、「世尊は、どのような状態になっているのだろう」
「世尊は、不動の心の統一によって坐っておられる」と考え、修行者も不動の心の統一によって坐りました。
尊者アーナンダは、夜が更け、宵の内を過ぎると坐から立ち上がって、肩に上衣を掛けて、お釈迦様のおられるところに合掌して、
「尊き方よ、夜が更け宵の内を過ぎました。来客のビクたちは、長らく坐っています。尊
き方よ、世尊よ、来客のビクと今回の来訪を喜び合ってください」
お釈迦様は、沈黙したままでした。
再度また、尊者アーナンダは、夜が更け、真夜中を過ぎると坐から立ち上がって、肩に上衣を掛けて、お釈迦様のおられるところに合掌して、
「尊き方よ、夜が更け、真夜中を過ぎました。来客のビクは長らく坐っています。尊き方
よ、世尊よ、来客のビクと今回の来訪を喜び合ってください」
再度また、お釈迦様は、沈黙したままでした。
三度また、尊者アーナンダは、夜が更け、明け方を過ぎると坐から立ち上がって、肩に上衣を掛けて、お釈迦様のおられるところに合掌して、
「尊き方よ、夜が更け、明け方を過ぎました。来客のビクは、長らく坐っています。尊き
方よ、世尊よ、来客のビクと、今回の来訪を喜び合ってください」
お釈迦様は、その心の統一から立って、尊者アーナンダに語りかけました。
「アーナンダよ、もし解っていれば、答えなくてもいいのだが。アーナンダよ、わたしと、五百のビクすべてが一緒に、不動の心の統一によって坐っていたのですよ」
お釈迦様は、このことを知って、ウダーナを唱えました
欲望の荊(いばら)にうちかち
悪口と迫害と拘束にうちかち
山のように動かない
楽苦に動じないこれがビクである(27)
以上が第三の経となる。
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やたらに騒がしいビク達が訪ねてきたて、お釈迦様に追い出されが、近くの場所で修行することになった。
ビク達は追い出されながらもお釈迦様のお気持ちをよく考えて修行に励み、神通を得るまでに成長した、その姿をみたお釈迦様はビク達を呼び戻し瞑想により会話を楽しまれた。
完全な沈黙は聖者同士の究極の対話なので、ブッダがビクたちの前でāneñjā(アーネンジャー)というサマーディ(禅定)に入って、ビクたちも朝まで、釈尊と同じサマーディに入っていたのです。
師匠と弟子たちは同じ境地に達していることを示されたところで、お釈迦様は、そのときこのウダーナを唱えられた。
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なにが書いてあるか
(直訳詩)
Yassa jito kāmakaṇḍako,
欲望の荊に勝利する
Akkoso ca vadho ca bandhanañca;
悪口と迫害と拘束にも
Pabbatova so ṭhito anejo,
山のように立ち、動かず
Sukhadukkhesu na vedhatī sa bhikkhū”ti.
諸々の楽苦にも、動揺しないのがビク
どのようなことが起こっても、心が動じない瞑想の心を体得した人の詩。
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伝 記
百ほどの修行者を束ねたヤソージャは、森の中で蚊や虻に刺されながらの禅定修行は、容易ならぬものであった。今日から見れば、やはり苦行である。しかし、それは為さねばならぬことである、とヤソージャは考えていた。
経歴など伝わっていませんが、テーラガーターに、このようなことばが伝わっています。
二四三 手足はカーラー樹の結節のようであり、体は痩せて、脈管が現われているが、飲食物について適量を知っているから、この人は、心が貧しくない。
二四四 森や密林のなかにいて、蚊や虻に刺されながら、そこで正しく念を凝らして、じっと堪え忍ぶべきである。- 戦闘の先陣にいる象のように。
二四五 〔修行者が〕一人でおれば、梵天のごとくである。二人でおれば、二人の神のごとくである。三人でおれば、村のごとくである。それ以上おれば、雑踏のごとくである。